山下醤造(二条)

 京都で焼鳥店「とりくら」や、もつ鍋店「亀八」などを展開する「起福」のラーメン業態。2009年に「千亀屋」として創業、2013年にリニューアルして現在のスタイルに。宿題店として残っていたので遅ればせながらの訪問。

 家系御三家の流れを汲んでいなければ家系に非ず。なんなら壱系すら邪道、商店系はもってのほか、という超保守的家系好きとしては、果たしてこの店のラーメンを家系と呼んでいいのか否か、ポイントはその一点のみに絞られる。何しろ店頭にも店内にも「家系」を自称しているわけですから。

 「山醤ラーメン(並)」700円。まずビジュアル。海苔三枚、クタクタほうれん草は問題ないが、チャーシューの存在感が強過ぎるのと、ネギが多過ぎること、そして茹でキャベツがデフォルトで乗っているのは家系とはやや異なる印象。スープは豚骨に鶏油が乳化してはいるものの、ベクトルとしては家系と言って良いと思います。ただ、家系らしさを出すならもっとカエシにエッジが欲しい。丸くてマイルド過ぎるのだ。

 麺は京都の絶対王者「麺屋棣鄂」製。美味しい麺だとは思いますが、形状食感ともに酒井逆切りの家系麺とは違います。そしてノーコールの茹で加減だとやや硬め。この麺を家系的に使うのならもっと茹でておきたい。

 あくまでも「これが家系ラーメンか否か」という観点で語ると上記の通り。しかし豚骨醤油ラーメンとして捉えると非常に良く出来た一杯になっていると思う。チャーシューも甘く味付けてあっていいアクセントになっているし、茹でキャベツもスープに馴染む。ネギも薬味ならこのくらいは入れて欲しいところ。

 そして何より、若い女性スタッフをはじめとする店員さんたちの接客やオペレーションが素晴らしい。無駄口を一切せず、テーブルチェックも抜かりなく、声掛けのタイミングやキッチンとホールの連携もスムーズ。さすが居酒屋などを多数手掛けているグループゆえのアドバンテージを見事に生かしている。お店を出てもしばらく外で見送るってなんですか。700円の客にそこまでしますか。

 超保守的家系好きからすると、諸手を挙げて家系とは呼べないものの、しっかりとした家系インスパイアのラーメンを出している佳店と言えるだろう。少なくとも量産型の自称家系ラーメンを家系と呼ぶならば、こちらの方が遥かに家系してると思う。


山下醤造
京都市中京区西ノ京職司町19

JR線・市営地下鉄線「二条」駅より徒歩1分


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京都拉麺通信

大好きなラーメンを通して、大好きな京都を語る。ラーメン評論家、山路力也のモノローグ。